名古屋御前能(2010.12.9(木))番組解説)
◎昼の部
◎夜の部
筝曲「石橋」 本年七月に開催された創立六十周年記念演劇人祭にて初演。能楽「石橋」を元に、獅子と蝶が戯れる場面を表現。 音楽は琴と笛で構成され、能楽の謡との調和も特徴の一つ。 狂言「若和布(わかめ)」 丹波国能勢の大寺の住持は、大破した寺の修復を無事に終えたので、お世話になった檀家を招いて宴を催すことを思い立ち、宴席で振る舞う酒の肴に海藻のワカメを都で買ってくるよう新発意(しんぼち=見習い坊主)に命じる。 ところが、幼い頃から山中で育った新発意はワカメを見たことがなかったため、都のスッパ(詐欺師)に言葉巧みに騙され、スッパ仲間の女をワカメだと言い含められて連れて帰るが、神聖な境内に女を連れて来たと師匠の逆鱗に触れ、寺を追い出されてしまう。 「末広」や「宝の槌」といった狂言にみられる取り違え物≠フ類曲だが、設定が主従ではなく畿内に隣接する丹波国の出家である点が特徴。 和泉流だけに伝承される狂言の一つで、二五〇余番に及ぶ流儀の現行曲の中でも取り分け上演が希有な、稀曲中の稀曲。 清元「吉野山」 『義経千本桜』四代目の道行を清元に改めたもの。 義経を慕って旅する静と、静を守る忠信の道行。ただしこの忠信は狐で、静の所持する初音の鼓は、忠信の両親の皮でつくられている。桜の満開の吉野山を舞台にした主従の道行。 通常は清元と竹本の掛け合いになるが、今回は清元のみで上演する。 |
<番組表(昼の部)>
◎夜の部
清元・筝曲「巴御前」源義仲と乳兄弟として育ち、また愛妾である巴御前は、女性ながらも秀でた武術で世に聞こえ、女武者として義仲軍に同行していた。しかし、義仲は粟津で負け戦となると、巴御前が共に討ち死にする事を許さず、「この守小袖を木曽に届けよ。この旨背かば主従三世の機縁が絶える。」と説得。 敵に囲まれた巴御前は長刀の秘術で窮地を切り抜け、夫の身を案じて戻ると、松の根方で義仲最期を目にする。義仲最期の願を叶えるため、武具を脱ぎ小袖を着て木曽の里に一人で去っていく。 能「松風」 摂津国、須磨の浦にやってきた旅僧は、磯辺にいわくありげな松を見つけた。それが二人の海人乙女・松風と村雨の所縁の松と知ると、僧は念仏して弔うことにする。早くも暮れる秋の日、浦には幽かに響く潮騒の音。 そこへ汐汲車をひいて二人の海女が現れた。二人は汐汲みに興じ、潮を湛えた桶に映りこむ月に戯れる。僧は海女たちの塩屋を訪ね宿を乞うも、一旦は断られる。しかし、出家と聞いて招き入れる二人。 僧が磯辺の松を話題にすると、二人は、在原行平が須磨に流された三年のあいだ側に仕え寵愛を受けたのが松風と村雨であり、実は自分たちこそが松風と村雨の霊であると明かす。やがて松風は、昔を物語るうちに狂おしい恋慕にかられ、行平の形見の烏帽子と狩衣を身にまとい、あの松こそは行平よとかき抱く…。 昔から、「熊野(ゆや)松風は(に)米の飯」(三度のご飯と同じくらい飽きのこないことのたとえ)とうたわれるほど、非常に人気の高い名曲。 |
<番組表(夜の部)>