錦秋特別公演「芯2011」中村勘太郎 スペシャルインタビュー 「和」で結ばれた同志で作り上げる「芯」。襲名を控えた今、日本と伝統芸能への思いを語る。

今回の錦秋公演の見所は?

初演(09年)の時は私自身、不安もありながら無我夢中で取り組みました。幸いお客様からは大変好評を頂き今回の再演になったわけですが、初演よりも再演のほうが演じる側としては難しい部分はありますが、ここが私たちの腕の見せ所で、前回よりもヴァージョンアップした内容を御覧いただきます。「芯」の魅力は、ひとつの公演で津軽三味線、和太鼓、歌舞伎舞踊など様々な「和」のジャンルを一度に楽しめるということです。普段滅多にないことですから、それだけでも貴重な時間になるんじゃないでしょうか。そしてそのコラボレーションも観られるわけで、これにいたってはこの「芯」ならではです。

前回公演では共演者の方からどんな刺激を受けられましたか?

津軽三味線、和太鼓が奏でる音ですね。古代から奏でられているということもあり、日本人の持つ「気」のようなもの、日本という国の地から出ている民族性のようなものを感じました。それは魂を大いに揺さぶるものであり、私も踊っていて血が沸き立つような感覚を味わいました。

七之助さんとの歌舞伎舞踊も皆さん楽しみにされていることと思いますが

今回の歌舞伎舞踊は曽我兄弟の仇討ちを題材とした「曽我もの」の一つ。私が曽我五郎、七之助が小林朝比奈妹・舞鶴で女形を踊ります。比較的メジャーな作品ですので親しみを持って頂けるんじゃないでしょうか。続くコラボレーション「芯」でも踊りますが、私が「動」だとすれば七之助は「静」。その対比を楽しんでもらえればと思います。

「和」の文化人として、今の日本人に必要なものは何だと考えられますか?

今回の「芯」のテーマでもあるんですが、結する心ではないでしょうか。それは団結する横の結束力でもあり、日本人としての魂を次の世代へと受け継いでゆく縦の結束力でもあると思います。あとは、もっと日本を知るべきだと思います。海外に行くとよく分かるんですが、自国のことを知らない日本の若い方が結構いらっしゃいます。外を知ることはまず内を知ることから始まるのではないでしょうか?芸事をする人間としては、そういった日本の伝統と日本人の魂の部分をしっかりと表現していきたいですね。

伝統文化を継承する方として、未来像はどう描いていらっしゃいますか?

より多くの人々に歌舞伎を知ってもらい、体感してもらうために常に発信してゆかなくてはいけないと思います。演劇などにも出演しますが、これも一人の“役者”として色んな人々やいい作品から刺激を受けています。自分自身をいつも磨きながらより優れた発信をしていければと思います。

もうすぐ30歳、お子さんも誕生して大きな節目となりそうです。
芸に対しての考え方になにか変化はありますか?

「勘太郎・七之助」で随分巡業もさせて頂いたんですが、勘太郎の名前では今年が最後になります。(2012年に「勘九郎」を襲名)子どもの頃から長く慣れ親しんだ名前でもあり思い出も沢山ありますから、大切に務めあげようと思います。子どもが生まれましたが、私が父・勘三郎に憧れたように、息子も私に憧れてくれないと困るんでね(笑)しっかりしなきゃって思います。