【能・狂言と文学 ―時代を越える“ことば”と“こころ”―】
名古屋能楽堂 6月定例公演
泉鏡花『歌行燈(うたあんどん)』(明治43年1月)
室町時代前期に大成した能・狂言は、それ以前に成立した古典文学から題材を得て作られました。そして能・狂言もまた、後代の文学に影響を及ぼしています。今年度の定例公演では、近現代の小説や戯曲の題材となった能・狂言の作品を主に取り上げ、時代を越えて受け継がれてきた日本文学の魅力をお伝えします。6月公演は、泉鏡花の名作『歌行燈』の素材となった能「海人」をお贈りします。
三重県桑名の旅館「湊屋(みなとや)」に、ある事件に関わった3人の人物が偶然、来合わせる。1人目は初老の陽気な旅人……実は名人の能楽師・恩地源三郎。2人目は三味線片手に門付けして歩く旅芸人……実はかつて源三郎の跡継ぎだった恩地喜多八。3人目は三味線も踊りもできない泣き虫の芸妓お三重……実は喜多八のせいで父を失った娘である。
3年前、源三郎とともに伊勢を訪れた喜多八は、地元の謡の名手に反感を抱き、玄人ならではのやり方で相手に恥をかかせる。若さ故のいたずら心だったが、相手が自死したことで源三郎から勘当され、さすらいの身となる。
一方、父を亡くしたお三重は鳥羽の遊郭に売り飛ばされるが、客の意に従わないため、罰として海に突き落とされる日々が続く。幸い伊勢の芸妓に引き取られるが、どうしても三味線が覚えられない。自分が情けなくて泣き暮らすうち、門付けの旅芸人(実は喜多八)に出会い、五夜の特訓で仕舞「玉の段」を教わる。
やがて桑名に流れてきたお三重は、源三郎の座敷に呼ばれ「玉の段」を披露する。源三郎はその舞いぶりを見て、喜多八が指導したことを見抜き涙する。喜多八もまた、源三郎がいると知って駆けつけながら、名乗りもできず、旅館の軒先で謡うのだった。
「玉の段」は、能《海人》の見どころで、わが子のため危険な海中に飛び込み、犠牲となる海女を描く。その情景はかつてお三重が折檻された様子と重なり、また、慕いあう人物の巡り会いというテーマも通じ合う。『歌行燈』にとって、「玉の段」は登場人物をつなぐ小道具であると同時に、その世界を支える屋台骨でもある。
[演目]
1、能「海人」(宝生流)/シテ 竹内澄子
2、狂言「鬼瓦」(和泉流)/シテ 大野弘之
開演前ショート解説「『海人』の見どころ、聞きどころ」/衣斐愛
| 公演日 | 2012(平成24)年6月2日(土)14:00開演 ※13:45から開演前ショート解説があります。 |
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| 会 場 | 名古屋能楽堂 |
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| 料 金 | 指定¥4,000 自由(一般)¥3,000 (学生)¥2,000 (税込) ※中京テレビ事業での取扱は、 指定席のみとなります。 |
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| 備 考 | ※当日券は自由席のみ500円増となります。 ※未就学児の入場はお断りいたします。 ※イヤホンガイド:公演当日、名古屋能楽堂にて演能の解説が聞ける受信機を 無料で貸し出しします。(日本語/英語) |

