クラシック界の新星!
指揮者・坂入健司郎が語る
「超一流のオーケストラたち」
いよいよ今秋、第41回名古屋クラシックフェスティバルが開幕します。『クラフェス史上最高最強。』という強烈なキャッチコピーに、驚くクラフェス・ファンの方々も、このキャッチコピーを見て初めてクラフェスを知った方々もいらっしゃることでしょう。そんな皆様へ、まずお伝えしたいことがひとつあります。それは、『クラフェス史上最高最強。』という言葉が、毎年やっている「閉店セール」だったり、毎年「史上最高の出来」と触れ込んだりするような世の中にありふれた謳い文句ではないということ。
正真正銘、40回以上開催されてきた名古屋クラシックフェスティバル史上でも最高・最強のラインナップが揃っているのです。"超一流"と呼ばれる世界を代表するオーケストラ、ソリストたちが名古屋に集結し、9月〜11月という短い期間で凝縮して聴くことが出来る、紛うことなく史上最高最強な機会。コロナ禍やロシアとウクライナの戦争によってヨーロッパへ気軽に旅行へ行きづらくなってしまった昨今の情勢において、ヨーロッパの音楽家たちの生演奏をしばらく聴けなかった我々の"渇き"を一気に潤してくれるかのようなフェスティバルになるでしょう。
さて、そんな史上最高最強のクラフェスに出演する"超一流"アーティストとは、どうして"超一流"なのか?そんなシンプルな疑問も生まれてくるはず。来日するオーケストラを中心に紐解いていきたいと思います。
まずは、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団。このオーケストラは1896年1月4日に創立したオーケストラで、創立演奏会ではドヴォルザークが指揮して、彼が作曲した作品が演奏されました。今回の来日公演も、演奏する作品は全てドヴォルザーク。今回のクラフェスでもドヴォルザークが生きていた当時の雰囲気を音楽で味わえることでしょう。チェコ・フィルの魅力は何といっても『音色』。私は、チェコの首都・プラハにあるチェコ・フィルの本拠地、ルドルフィヌム(創立演奏会でドヴォルザークも指揮したコンサートホール)で彼らの演奏会を聴いたとき、プラハ城にのぼって深呼吸しながらプラハの街並を眺めているかのような『音色』がしたことに驚きました。乾いていて、土埃も混じるようなスラヴ系の空気、プラハの街並みを彩るオレンジの屋根のような暖色系の響き…間違いなくチェコ・フィルにしか持っていない『音色』がある。是非、皆様もこの『音色』を体験していただきたいです!
さらに歴史深いオーケストラが、アムステルダムにあるロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とウィーン・フィルハーモニー管弦楽団です。ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団は、1895年~1945年まで50年間も首席指揮者を務めたウィレム・メンゲルベルクの功績が大きいといえます。メンゲルベルクは当時活躍していた作曲家たちと親交を深め、作曲家たちの真意をより深く表現することに長けた指揮者でした。今回名古屋で演奏されるチャイコフスキーの交響曲第5番は、最近の研究でメンゲルベルクが手直し(具体的には第4楽章の短縮や打楽器の追加など)した譜面がチャイコフスキーの弟・モデストからのアドバイスを反映した貴重な資料とされ、楽譜が出版されたほど。つまり、名曲・チャイコフスキー交響曲第5番を最も熟知したオーケストラのひとつ。私にとっては、指揮を務めるファビオ・ルイージが別のオーケストラ(※デンマーク放送交響楽団)でチャイコフスキー:交響曲第5番を指揮した演奏会を聴いた思い出も強烈です。ルイージのほとばしる情熱とエネルギーに飲み込まれてしまいそうな経験でした。オーケストラからも熱狂の渦が見えるような。今回のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団との共演でも観客を熱狂の渦に巻き込んでくれることでしょう!
ウィーン・フィルの伝統については年明けのニューイヤーコンサートの中継等で、もはや誰もがご存じかもしれません。ウィンナ・ホルン、ウィンナ・オーボエ、ウィンナ・トランペット、ウィンナ・パウケン(ティンパニ)などウィーンで伝統的に使われてきた楽器を、そのまま使用し続けるオーケストラで聴くウィーンの音楽は、筆舌に尽くしがたいものがあります。ニューイヤーコンサートの会場でもあるウィーン・フィルの本拠地、ウィーン・楽友協会(ムジークフェライン)は会場の中に入ると、過去の演奏家や作曲家に見守られているような霊感を与えてくれるホールで、まさにクラシック音楽の聖地。楽友協会で聴くウィーン・フィルは、「世界一の響き」と形容するに相応しい音楽体験なのですが、ご心配なく!愛知県芸術劇場の響きとウィーン・フィルの音色は非常に相性が良いので、ウィーンの楽友協会(ムジークフェライン)で聴く音楽体験を名古屋でも楽しめるはずです!
先ほどから、"超一流"を歴史深い「伝統」の話と結び付けてお話ししましたが、ウィーンやニューヨークでも活躍したユダヤ人指揮者であり、偉大なる作曲家でもあるグスタフ・マーラーはこう語りました――「伝統とは灰を崇拝することではなく、炎を絶やさないことである。」――このマーラーの強い意気込みは、前述の伝統あるウィーン・フィルにも多大なる影響を与え、目覚ましい成果をあげましたが、ほどなくしてナチス・ドイツの台頭により、ユダヤ人迫害という悲しい歴史を経ることになります。第二次世界大戦が終わり、ユダヤ人が中心となって建国されたイスラエルにて誕生したイスラエル・フィルは、マーラーの遺志を受け継ぐかのごとく「炎を絶やさない」チャレンジングな指揮者と音楽を共にしてきました。若干29歳のバーンスタインを指揮者に置き、その後は32歳のズービン・メータを音楽顧問に据えるなど、今となってはレジェンドといえるような指揮者と若い時代から共に歩んで来たオーケストラなのです。今回、名古屋で指揮するラハフ・シャニも31歳の若さでイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団音楽監督を務めた俊英。新しいレジェンドとの化学反応を目撃できる一日となるはずです!
開催決定!第41回名古屋クラシックフェスティバル presents
湯山玲子&坂入健司郎 スペシャルトークイベント
昨年10月、好評をいただきました、クラシック・プロデューサー湯山さんと指揮者・坂入さんのクラシック・トークを今年も開催します!”シリーズ史上最高最強”第41回名古屋クラシックフェスティバルの魅力大解剖!クラシックをとりまく最新の情報、新しい価値の発見・楽しみ方など、余すところなく存分に語っていただこうと思います!
ぜひ、みなさま奮ってご参加ください!
慶應義塾大学経済学部卒業。指揮を井上道義、小林研一郎、フェドセーエフなどから学ぶ。
2008年より東京ユヴェントス・フィルハーモニーを結成。15年、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンへ出演。MOSTLY CLASSIC誌「注目の気鋭指揮者」にも推挙された。16年、川崎室内管弦楽団の音楽監督に就任。20年、日本コロムビアの新レーベルOpus Oneよりシェーンベルク「月に憑かれたピエロ」をリリース。読響、日本フィル、新日本フィル、東京シティ・フィル、神奈川フィル、仙台フィル、名古屋フィル、愛知室内、大阪フィル、京都市響などと共演。大阪響とのブラームス全交響曲演奏会は注目を集めている。
公演情報
ⒸPetra Hajska
セミヨン・ビシュコフ指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団チェロ:パブロ・フェランデス
<文化庁 劇場・音楽堂等の子供鑑賞体験支援事業>対象公演
10/28(土)17:00愛知県芸術劇場コンサートホール
ⒸSimon Van Boxtel
Presents
ファビオ・ルイージ指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団ピアノ:イェフィム・ブロンフマン
<文化庁 劇場・音楽堂等の子供鑑賞体験支援事業>対象公演
11/4(土)14:00愛知県芸術劇場コンサートホール
ⒸWiener Philharmoniker/Dieter Nagl