命を助けられた恩返しに僧の望みを叶えると言って現れた山伏姿の天狗。僧は、霊鷲山（りょうじゅせん）で釈迦が説法したようす（＝大会）を見たいと望む。天狗は「決して信心をおこさぬこと」を条件に、僧の望みを叶えるのだが、僧が思わず信心を起こして合掌してしまうと、仏法を護る帝釈天が現れて…というのが能〈大会〉である。秀吉は、〈源氏供養〉〈井筒〉〈杜若〉など優雅な能を好む一方で、〈皇帝〉〈大会〉のようなスペクタクルある、視覚的にも楽しめる能も好んで演じている。禁中での能・狂言の会を含め、秀吉は〈大会〉を六度演じているが、人を驚かせたい、喜ばせたいという、秀吉のエンターテイナー的な性分が垣間見える。