【「世阿弥誕生650年」 ― 今、世阿弥を観る ―】
名古屋能楽堂 12月特別公演
「この道の第一の面白づくの芸能なり」(『風姿花伝』第二「物学条々」より)
これは、世阿弥が「物狂(ものぐるい)」について述べた言葉である。能〈百萬〉は、百萬という女物狂―女性芸能者―を主人公にした狂女能で、もとは世阿弥の父・観阿弥の得意曲「嵯峨の大念仏の女物狂の物まね(嵯峨物狂(さがものぐるい))」であった。生き別れた母子が再会する人情劇であったものを、実在の女曲舞・百萬を主人公にして曲中に曲舞を舞わせ、さらには、その曲舞を我が子を思う内容に変えたのが世阿弥であったと言われている。クセで主人公の心情を綴る、それが「芸」の見せ場にもなる。この世阿弥の工夫で、「物狂」は「この道の第一の面白づくの芸能」、すなわち能最大の人気芸となっていった。〈百萬〉が辿った改作の道は、世阿弥が「物狂」というジャンルにもたらした革新でもあった。
| 能 | 「百萬(ひゃくまん)」(宝生流) /シテ 衣斐愛 |
| 能 | 「融(とおる)」(観世流)/シテ 八神孝充 |
| 狂 言 | 「懐中聟(かいちゅうむこ)」(和泉流) /シテ 鹿島俊裕 |
| 舞囃子 | 「清経(きよつね)」(金剛流)/シテ 加藤かおる |
