オペラが生まれたのは、ルネサンス末期のイタリア・フィレンツェの宮廷。作曲家のヤコボ・ペーリと詩人オッターヴィオ・リヌッチ−ニによって「ダフネ」という音楽劇が作られたのが最初のオペラだとされています。楽譜が現存する最古のオペラは、1600年10月6日、フィレンツェのピッティ宮殿で初演された「エウリディーチェ」。フランス国王アンリ4世とマリア・デ・メディチとの結婚式の祝いの席で上演されたといわれています。
上演中、歌声に合わせて字幕スーパーなどで日本語の台詞が表示される「字幕付き公演」も多くあり、音楽とストーリーを自然な流れで楽しむことができます。これはオペラの本場でも同じ。最近では、イタリアでもイタリア語の字幕が付くこともあるそうです。100年以上前の言葉が歌に乗って流れるわけですから、現代の一般的なイタリア人にも聴き取りにくいはずですよね。
オペラの場合、舞台で演じるのは俳優ではなく、音楽や声楽の専門教育を受けた「歌手」です。オーケストラの演奏をバックに、1,000人規模の劇場にマイクなしで生の声を響かせるためには、圧倒的な声量が要求されます。また、声の美しさ、広い音域を自由にコントロールする技術、喜怒哀楽の感情を豊かに表現する力も求められます。それらを兼ね備えたこのオペラ独特の発声法は、一般にベルカント唱法(「美しい歌声」の意)と呼ばれます。
悲劇、喜劇、ラブストーリー、歴史ドラマ、ラブコメディなど、そのジャンルはさまざま。公演を選ぶ際、演目は第一のポイントになります。
[おもな作品のジャンル別リスト]
◎悲劇/「椿姫」「蝶々夫人」「ロミオとジュリエット」
◎歴史ドラマ/「トゥーランドット」「ドン・カルロ」
◎喜劇/「フィガロの結婚」「コシ・ファン・トゥッテ」
◎神話・伝説/「タンホイザー」「さまよえるオランダ人」
■ソフィア国立歌劇場とは…
アンナ・トモワ=シントウ、ギャウロフ、カサロヴァ等、錚々たる歌手たちを輩出した、ブルガリアの名門歌劇場。1890年の開場以来、120年に渡りブルガリアの芸術文化の拠点として、その役割を担っています。白亜の円柱が並ぶ玄関、その先にあるシックな劇場は、公演の日には地元の人たちの熱気で溢れます。
【物語】1890年頃、シチリア島の村。村の青年トゥリッドゥが兵役から帰ってくると、かつての恋人ローラは馬車屋アルフィオの妻になっていた。やがてふたりはアルフィオの目を盗んで密通を重ねる仲となる。それを知ったトゥリッドゥの恋人サントゥッツアは嫉妬に狂い、事の次第をアルフィオに話す。激怒したアルフィオとトゥリッドゥが決闘することに。やがて「トゥリッドゥが殺された!」という叫び声が町に響くー。
◎「カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲」
流麗な旋律が効果的に使われているのが魅力。特に、劇的なラストシーンの直前に流れる間奏曲は大変美しく、クラシック音楽の中でも最も人気のある曲のひとつです。
【物語】息を引き取ったばかりの大富豪ブオーゾの寝室に、親戚たちが集まっている。彼らの狙いはブオーゾの遺産。見つけた遺書には「遺産は全て修道院に寄付する」と書かれていた。愕然とする彼らのもとに現れたのがジャンニ・スキッキ。一族のひとりリヌッチョの婚約者・ラウレッタの父だった。皆の相談を受けてスキッキが立てた計画。それは、死んだはずのブオーゾに変装し、公証人や証人の前で改めて遺書を作り直すというものだった…。
◎アリア「私のいとしいお父さん」
娘のラウレッタが父を説得するシーンで歌われるアリア。美しいメロディとドラマチックな雰囲気が魅力のプッチーニの作品の中でも、とりわけ印象深い作品です。
■プラハ国立劇場とは…
オペラ、バレエ、演劇をプラハ市内の複数の会場で上演している劇場組織。中でもスタヴォフスケー劇場は、18世紀の美しい建築が今も保持・使用されており、最も長い歴史と伝統を誇ります。現在、モーツァルトのオペラはすべてこの劇場で上演され、プラハ市民から「モーツァルト劇場」と呼ばれて愛されています。
【物語】フィガロとスザンナは、結婚を目に気持ちもはずむ毎日。一方、ふたりの雇い主アルマヴィーヴァ伯爵は、スザンナを我がものにしようと企んでいる。伯爵の目を彼女から逸らそうとするフィガロ。しかし、フィガロに夢中の女中頭マルチェリーナや、彼に恨みをもつバルトロに邪魔されうまく行かない。ところがなんと、フィガロはこのふたりの実の息子であることが判明。彼らの協力でようやく結婚式を挙げられたフィガロとスザンナ。式の最中に意中のスザンナから恋文を受け取ったアルマヴィーヴァ伯爵は大喜び。逢引の場所に行くと、なんと伯爵夫人がフィガロと逢引していた!
◎軽快なモーツァルトの名曲の数々
有名な序曲、フィガロのアリア「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」、ケルビーノのアリア「恋ってどんなものかしら」など、モーツァルトの素晴らしい音楽で溢れる作品。圧巻は第2幕のフィナーレ。次々と登場人物が現れ転調を繰り返しテンポアップしていく音楽に、客席の雰囲気も最高潮になります。