名古屋クラシックフェスティバルの魅力に迫る!

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期待の名作、名匠が目白押し。 秋シーズンの名古屋クラシック音楽界の最大の呼び物、名古屋クラシックフェスティバルがいよいよ始まる。
今回が27回目だが、主催の中京テレビ放送が開局40周年を迎えた記念の年だけに、愛知県芸術劇場で開かれる10月28日からの7公演はオペラ3、オーケストラ2、バレエ、リサイタル各1、どれひとつとして見逃せないラインナップだ。
名古屋クラシックフェスティバルは「世界の優れた演奏家や演奏団体を招いて、低料金でクラシック音楽をこの地方のファンに楽しんでもらおう」と1983年にスタートした。先行していた中部日本放送主催の春の名古屋国際音楽祭に対抗して、フェスティバルの時期を“芸術の秋”に設定した。

「小さく生んで、大きく育てる」―フェスティバルを企画・運営する中京テレビ事業の方針通り、比較的地味にスタートしたフェスティバルは第6回に、名指揮者ヴォルフガング・サヴァリッシュ率いるドイツの名門、バイエルン国立歌劇場を自主招聘し、初めてオペラをラインナップに組み入れたころから、大きく、華やかに飛躍した。以後、それまでフェスティバルの中心だったバレエ以上に、段々とオペラ公演が全体の中で大きな比重を占めるに至っている。
もうひとつ、これまでのフェスティバルを通観して気付くのは同じ演目、同じ演奏家が比較的頻繁に登場している点だ。毎年毎年“日替わりメニュー”風に目新しさを追う代わりに、ファンは同じ演目でも違った演奏家によって違いを楽しみつつ、作品の豊かさを知らず知らずに体験できたり、あるいは演奏者の以前からの変貌ぶりに驚いたりと、一味違った贅沢が満喫できるように按配されている。


第27回でいえば、7公演のうちフェスティバル初登場はひとつもない。

開幕を飾るのは指揮者シャイーとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンビだ。このオーケストラの第5代音楽監督メンデルスゾーンの生誕200年の年に当たる今回はその交響曲第5番『宗教改革』を取り上げ、大先達に敬意を払う。もうひとつの呼び物、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団と老匠ブロムシュテットはコンビを組んでは初登場となる。それだけにドヴォルザークの交響曲『新世界より』も一入新鮮で、聞き逃せない。ピアノのオピッツは第24回に続いての登場だ。じっくりと成長してきたドイツ音楽の正統派はいま、豊饒な香りを湛え出した。演奏されるのが『ワルトシュタイン』をはじめ、得意のベートーヴェンのソナタばかりだから、最高の名演奏が待っている。

オペラでは、プラハ国立歌劇場によるヴェルディの『アイーダ』が第23回、レニングラード国立歌劇場によるチャイコフスキーの『エフゲニー・オネーギン』が第9回に次いで、同じ団体による再演となる。前回との違いを味わえるし、『アイーダ』では名花テオドッシュウ扮するアイーダ役が必見。また、レニングラード国立歌劇場は中京テレビ事業の自主招聘だけに、気合が入っていよう。同じヴェルディの名作『椿姫』は本場イタリアのベルガモ・ドニゼッティ劇場が上演する。ヴィオレッタ役に名実兼備の“ディーヴァ”デヴィーアを擁して「これぞ本場もの」を見せてくれるはず。 マリインスキー・バレエによるチャイコフスキーの名作『眠れる森の美女』については多言を要しまい。クラシック・バレエの‘粋’が堪能できよう。

音楽ジャーナリスト 早川 立大

協力:(株) F.P.P.


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