何歳のときからチェロを始めたのですか?5歳のとき、母親がオーケストラの練習に連れて行ってくれました。私に色々な種類の楽器を見せようとしてくれたんです。地元のミュンヘンでのことでした。当時は分からなかったのですが、シューマンのチェロ協奏曲の練習中でした。そのとき、チェロの音色、チェロを演奏する姿に一目ぼれし、母親にチェロを習いたいと頼んだのです。


プロの音楽家になろうと思ったのはいつ頃ですか?チェロを習い始めてから数年後、ミュンヘンにある子供のための音楽学校に通い始めました。音楽を作ること、友達と一緒に室内楽やピアノとデュオを演奏するのがとても楽しくて・・・8歳か9歳の頃に初めてコンクールに出場しました。その後、初めての本格的なコンクールとして、モスクワの若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクールに出場しました。そこで幸運にも一位を獲得し、そのとき初めて、よし、本格的にこの道に進んで、プロの音楽家を目指すことができるかもしれない、と思いました。


あなたの楽器の魅力、また難しいところを教えてください。チェロというのは、色々な点でやりがいのある、複雑な楽器だと思います。とても幅広い音を引き出す可能性を秘めている楽器で、非常に深くて力強い低音域から、美しい歌声のような、ヴィオラやヴァイオリンに匹敵するような高音域まで出すことができます。チェロという楽器から引き出せる感情の幅にも目を見張るものがあります。年を重ねるにつれ、音色、フレージング、そして喋るように歌うようにチェロを弾くことについて、より深く追及するようになります。本当に魅力的で、チェロが語る世界にいつも飛び込んでいくような感じです。


あなたの弾いている楽器について教えてください。大変美しい、古いチェロで、1727年にイタリアのベネチアで、マッテオ・ゴフリラーという素晴らしいチェロ職人によって製作されたものです。その後このチェロは世界中を転々とし、まずはイタリア、その次はハンガリーでブダペストのチェリストの手に渡り、その後は長年アメリカのニューヨークにありました。幸運にも5、6年前からこの楽器で演奏するようになり、今は演奏旅行にも常に持ち歩きます。毎日何か新しい発見、新しいインスピレーションがあり、それは楽器が自らの過去から教えてくれるものなのです。本当にエキサイティングですね。


今回のプログラムはどのようにして生まれたのですか?それぞれの曲を選んだ理由は?無伴奏チェロ作品の中心をなす傑作といえば、やはりバッハとブリテンだと思います。バッハの組曲は6歳のときから勉強を始め、12年前、2000年のバッハ記念イヤーでは連続演奏会も行い、組曲の録音もしています。バッハとブリテンの無伴奏組曲は、とても素敵でやりがいもある組み合わせだと思いました。17歳のとき、ロストロポーヴィチに演奏を捧げるという機会があり、ブリテンの組曲を演奏しました。ロストロポーヴィチと時間を共にしたこと、そして彼はブリテンと個人的に大変親しかったということ、この繋がりは私にとって、音楽の歴史をもっと勉強しよう、この組曲をもっと勉強しようと思う、大きなきっかけになりました。二人の作品には共通点も多く、というのも、ブリテンはバッハの無伴奏組曲の現代版に匹敵する作品を作ろうとしていたからです。とても素晴らしい組み合わせだと思っています。


既に何度か来日されているそうですが、日本の印象は?初めての来日は、数年前、京都交響楽団との共演がきっかけでした。京都ではお寺や庭園を訪れ、街を囲む美しい自然を楽しむことができ、本当に心を打たれました。新しい世界、初めてのアジアの国での素晴らしい初体験になりました。その後は、ほぼ二年毎に演奏会のために来日し、東京は既に何度も訪れていますが、今回は名古屋でも演奏できるので、とても楽しみです。もちろん日本食、お寿司も大好きです。本当にたくさんのこと、伝統や文化、音楽、芸術、生活文化、様々な要素に惹きつけられます。再び日本を訪れることがとても楽しみです。


今回のリサイタルで楽しみにしていることは?日本のクラシック音楽ファンの皆さまには、なにか特別なスピリットがあるように感じます。ヨーロッパの音楽文化に、皆さまが深い敬意と愛情を持ってくださっているように思います。ドイツや他のヨーロッパ作品をステージ上で演奏していて、その気持ちはいつも伝わってきます。本当に嬉しいことです。そして日本の聴衆の皆さんはとても集中して聞いてくださるので、演奏するのがもっと楽しくなります。今回もそれがとても楽しみです。


名古屋に向けて、メッセージをお願いします。もちろんです。名古屋の皆さん、こんにちは。バッハとブリテンの組曲をもうすぐ名古屋で演奏できることを、とても楽しみにしています。皆さまにも、私と同じくらい音楽を楽しんで、よい時間を過ごしてもらえるよう、そして終演後には皆さまに直接お目にかかることもできるよう願っています。コンサートで、どうぞ素晴らしい時間をお過ごしください。