【〜能・狂言と“世界”〜】
名古屋能楽堂 3月定例公演
オペラに翻案された能 隅田川
明治、大正と時を経て、能と狂言はより多くの外国人の目に触れ、その様式に影響を受けた西洋の演劇人も現れました。アイルランドの詩人・劇作家のイェーツが発表した舞踊劇≪鷹の井戸≫や、ドイツの演劇家ブレヒトの、能≪谷行≫を翻案した≪諾と言う人、否と言う人≫が著名です。
この公演で上演される能≪隅田川≫は、音楽の教科書などでおなじみのオーケストラ作品≪青少年のための管弦楽入門≫を作曲したブリテンによって翻案されました。ブリテンは1956年に来日した際に能≪隅田川≫を鑑賞し、粗筋は能そのままに、枠組みをキリスト教寓話に置き換えた教会用オペラ≪カーリュー・リヴァー≫を発表しました。主要人物がすべて男声で、コーラスが8人、半仮面をつけるのも能の影響といわれています。このオペラのラストシーンで、子どもの亡霊が母親に「僕たちは天国で会えるでしょう」と歌って慰め、母親もその声に癒されます。群集の「南無阿弥陀仏」の声が、ブリテンには亡者への手向けとしてだけでなく、生者への慰めとしても聞こえたのです。
幕末の開国から150年、能・狂言はますます世界に拡がりつつあります。世界からの眼は、これからも作品の解釈に新しい視点を与えてくれることでしょう。
[演目]
1、能「隅田川」(すみだがわ)
2、狂言「禰宜山節」(ねぎやまぶし)

